点頭てんかん*以下「臨床小児神経学」より抜粋

点頭てんかんは、乳児にみられる発作の中で最も悪質な発作で、高率に精神運動発達障害を残す。

<臨床症状> 発病年齢は生後5,6ヶ月ごろがピークで、男児に多く生後1歳未満に発病する。発作の型としては、瞬間的な全身性ミオクロニー発作が特徴である。すなわち驚いたように両手を広げ前屈する発作が、寝て起きたとき、あるいは眠くなったときなどに、シリーズをなして出現する。1回7〜8分から15分くらいの間に15〜30回続けて起こり、それが1日2,3回から数回起こる。

 小児が頭を前屈するので、点頭発作、またはイスラム教のお祈りのように、両手を上げて頭を前屈するのでサラームけいれんsalaam krampf、あるいは寝ていて身体を急に折り曲げるので、ジャックナイフ型の発作などと、いろいろな呼び方がなされている。

 発作が起こるとともに、今まで笑っていた乳児が笑わなくなったり、お座りしていた乳児がお座りしなくなるような精神運動発達の荒廃がみられてくる。

発作の型としては、このほかに伸展型extensor typeなどがある。

<原因的分類> 発作がみられるまで、発達が正常の真性cryptogenicと小頭症、分娩障害による脳障害、脳奇形、結節性硬化症、フェニルケトン尿症、楓症尿症など、すでにあきらかな原因があり、脳に障害が存在しその随伴症状として点頭てんかんがみられる症候性symptomaticに大別される。原因のうち、単性疾患としては結節性硬化症が最も多い。この場合、皮膚の白斑が診断の手がかりとなる。

<検査所見> 脳波でヒプスアリスミアhypsarrhythmiaを呈するのが特徴である。これは全体の50〜60%にみられるにすぎず、ほかは多棘波multiple spikes,不規則棘徐波結合irregurar spike and wave  complexなどの異常がみられることが多い。

<治療> ビタミンB6大量療法、バルプロ酸、クロナゼパム投与などがあるが、ACTH療法が有効である。合成ACTH(コートロシンZ)が使用される。ACTH使用により、脳に一過性の萎縮がみられる。このため最近は、なるべく少量を短期間に使用する傾向がある。

<予後> 予後は不良で、90%以上に何らか型の精神運動発達障害みられる。また、50%以上に他の発作型の合併がみられる。点頭てんかんの発作そのものは、2〜3歳以後になると自然消失するが、つぎに述べるLennox症候群や焦点発作などの、他の発作型へ移行することが多い。脳波のhyparrhythmiaも発達の一時期にみられる異常で、年齢をとるとともに、焦点性発作波や不規則棘徐波結合に移行する。

 点頭てんかんで予後良好なものとして、ソーレルは点頭てんかん出現以前の発達が正常であること、治療が発病1ヶ月以内に開始され、発作が抑制された症例、脳波で局在のみられないことなど条件をあげている。発作の消失は、必ずしも知能の改善を意味しない。



ゆーりーより、ひとこと
いろいろな点頭てんかん児のご家族と情報を交換させていただきましたが、発症時期もまちまちで予後についてもそれこそいろいろでした。
どの条件なら予後が良いかは本当にわからない事だと思います。治療についても最近はいろいろな新薬が試みられていますが発売までには時間を要する様です。
てんかんに関する最新の情報は「てんかん協会」の機関紙より知ることができます。てんかんでお悩みの方は入会されることをお薦めします。