ACTH療法とは?
*「点頭てんかんハンドブック」(社)日本てんかん協会東京都支部
1999年1月20日発行より

<ホルモン療法> 1956年にベルギーの神経科医ソレルらがはじめて報告して以来、ACTHという脳下垂体ホルモン(副腎皮質刺激ホルモン)が点頭てんかん発作を抑制する効果があることが多くの追試によって確認されました。その効果は即効性で、投与開始後2週間以内に発作は全く消失するか、もしくは大部分消失しますので、今日でもなお世界中の多くの施設で第一選択薬として使われています。 ホルモン剤には、ACTHの他に、副腎皮質ステロイドホルモン剤(プレドニソロンなど)を使うこともあります。副腎皮質ホルモン剤は内服剤で、注射によらない点は有利ですが、効果の発現がACTHに比べると遅く、有効率もやや劣る傾向があります。従って、ACTHの方がより好んで使われておりホルモン療法と言えば、すなわちACTH療法を意味すると言って良いでしょう。アクス療法、アクサー療法などと呼ぶ医師もいますが同じACTH療法のことです。

<使用するACTH製剤と投与スケジュール> 日本では、作用時間の長い人工合成ACTH製剤であるコートロシンZが専ら使われます。1日1回、0.01〜0.15mg/kgを筋肉内に注射します。標準的な投与スケジュールは1日1回ずつ筋注を、最初の2週間(14日間)毎日行います。有効な場合は、この最初2週間連日の筋注で、発作が消失ないし著減し、明らかな効果がわかりますので、3週目からは筋注を1日おきにし、第5週、第6週は週2回だけに、次いで第7週、第8週は週1回だけに筋注回数を減らし、合計8週間で終了とします。筋注を毎日または1日おきに行う期間は、最初の4週間ですが、この期間は入院して行うのが原則です。筋注回数が週2回以下になれば、通院で行っても差し支えありません。以上は、基本スケジュールであって、決してこの通りに行わなければならないというキマリではありません。1回投与量を下は0.005mg/kg、上は0.025mg/kgを限度として、増減させて差し支えありません。連日筋注の期間を7〜10日間に短縮したり、3週間に延長したりします。また前記のように8週間かけて中止するのではなく、4〜6週投与したあと、突然中止しても、特に目立った不都合はありません。個々の例で効率の様子によって、臨機応変に使い分けるのが望ましいでしょう。

<効果と副作用> 効果は即効性で、多くの場合、治療開始後1〜2週間の間に現れます。約8割の患児で、発作が完全に消失するでしょう。臨床発作の消失とほぼ並行して、脳波異常(ヒプスアリスミア)も消失するか、著しい改善が得られます。脳波の改善率は一般に発作改善率より低い傾向にあります。つまり、目で見ると発作はすっかり消失したように思える例でも、脳波で検査すると、程度はずっと軽度になったとは言え、異常所見が残存している場合が少なくありません。困った問題は副作用です。注射開始後最初に現れるのは不機嫌、異様な興奮、睡眠寸断など、2週目からは肥満、むくみ、血圧上昇が現れます。もっと長期的には白内障、骨粗鬆症を来すことがあります。感染に対する免疫力も低下しますので、感染源への接触を極力避けること、すでに感染症にかかっている時は、ACTH療法を中止するなどの配慮が必要です。 もっとも、前記した0.01〜0.015mg/kgという1回量は、初期の時代の使用量に比べて半分の極少量ですので、最近では副作用の程度も著しく軽くなりました。


確かにACTH療法の効果は素晴らしく、何をやってもだめだった悠夏の発作も5日で消失しました。ただACTH療法には問題点もたくさん残っています。経験上、私が最も問題と思っているのは効果の持続性です。残念ながら1回の治療で完全に発作と決別できるかというとそうではありません。
現に悠夏も退院後1ヶ月で再発しています。今第2クールを行っている最中です。その効果を持続させるにはどうすれば良いのかが今後の課題だと思います。

第2にはやはり副作用の問題でしょう。悠夏の場合、治療中はひどい不機嫌と異常なハイテンション、不眠、空腹などに3日ほど苦しみます。山があって3日をすぎると落ち着いてきますがその現れ方は子供によってそれぞれです。その3日間は「もう嫌だ!この治療は二度とやりたくない。何とかしてくれー!」そんな感じです。悠夏は3日の内2回ほど眠剤を使っています。

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