悠夏はきっと特発性に違いない。だって今までほんとに普通だったもの。他には何も異常はなくたまたまてんかんを発症しちゃっただけだよ。きっとそうだよ。だからきっとビタミンB6を2、3日飲めば発作もおさまるだろう。
今考えれば何甘い考えしてんの!って思うけどその時はそう思っていた。そう思いたかった。
11月の初めに予定していた悠夏が生まれてはじめての家族旅行もすぐにキャンセルしなかったほど、ビタミンB6という薬にたよっていた。
もっと後でビタミンB6で発作がおさまるのはほんの1割程度と知ることになるのだが。
そんな私達の思いとはうらはらに発作はどんどん増えていった。
その度に病院のI先生に電話して「どういうことですか?どうすればいいですか?」などとあせりの気持ちをぶつけた。
「すぐに効くお薬ではないし発作も増えたり減ったりするものです。もう少し様子を見てください。」先生はそうこたえた。
悠夏は発作の後ひどく不機嫌になり1時間以上泣きっぱなしということが何度もあった。
泣く子供にはミルクしか頭にない私は何とかミルクを飲ませて、落ち着かせようとするが何をしても受け付けない。上の子がほとんど泣かない子だったのでオロオロするばかりだった。
悠夏が泣き疲れ眠ってしまうと私は今度は病気について勉強した。
知能障害、精神発達遅滞 それって一体どういうことだろう。知能障害って知恵遅れってこと?
なんですって、悠夏が知恵遅れ?私ははじめて自分を責めた。私の責任だ・・。この子に普通の子としての未来がないなんて。どうしてこの子に償えばよいのだろう。
寝顔をみてひたすら泣くことしかできなかった。生きていてこんなに苦しい気持ちがあるということを初めて知った。そしてその時「私の人生は全部この子に捧げよう、この子のために生きよう。」そう心にきめた。
結局、悠夏の発作は全然改善されず、私達は「1週間」といった先生の言葉に反して、電話し受診をお願いした。
今考えてみればこのビタミンB6で様子を見ていた3日間が一番苦しく地獄にいるような日々だった様に思う。見通しのたたない今後のこと、全然笑わなくなってしまった悠夏、発作の度に泣き叫ぶ悠夏。
食べ物の味もわからず夜も眠れない。
なんで悠夏なの?どうして悠夏にこんなひどい仕打ちを?
今まですべて順調に進んできた私達のはじめての挫折だった。
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